2016.12.27

あれこれ考えすぎない方が幸せな恋の結末を呼ぶ。:よろず女子百景(8)


青春の恋は、謎だらけ。それでも、深く勘ぐらないのも青春。良いことだけをまっすぐに受け止めれば、それは幸せな恋になる。

あれこれ考えすぎない方が幸せな恋の結末を呼ぶ。

憧れていた先輩の卒業式に、意を決して第2ボタンを貰いに行った春。

式が終わって、昇降口の下駄箱の前でやっと見つけた先輩の学ランには、第2ボタンはおろか、第1ボタンまでもが既になくなっていた。

遅かったか〜〜〜!(涙)

先輩と私は同じ放送部で、一度だけ放送室に二人きりになったことがある。少し前まで神戸に住んでいたという先輩は、関西弁の語尾で「〜や!」と喋って私をドキッとさせ、口数の少ない先輩から飛び出した方言のギャップに、私は恋をした。

そんな先輩に、告白するまでの勇気はなかったけど、せめてもの思い出に……と第2ボタンを貰いに行ったまでは良かった。だけど、彼がこんなにも人気モノだったなんて! 私の他に少なくとも二人、ギャップ萌えした女子がいたらしい。

くぅ……。がらんとした制服にボー然としていると、「どれがいい? 1,2,3」と先輩は残り3つのボタンを指差した。

え? 3択!?(笑)
えっと、確か……第2ボタンの次には第5ボタンに価値があったような……。 

どこで聞いたかうろ覚えでいい加減な情報を元に、私は3、つまり第5ボタンを指差した。すると先輩はボタンを外しながら、

「これホントは二番目にあったやつだから、第2ボタンだよ」

と、照れくさそうに手渡してくれた。「大事に取っておいてね」と。

ホントは第2ボタン……???

なんのこっちゃ。先輩はなぜそんな取っ替えっこを……? 
事前に第2ボタンを本命じゃない子に予約されてて、渡したくないもんだからすり替えておいたとか?
それなら何故、遅れてやって来た後輩に第2ボタンを渡してしまう? 選択とかまでさせて!!

……謎だった。一連の先輩すべてが謎。今の私なら「え、ちょっ、先輩! どうしてそんなシチメンドクサイことを!?」と詰め寄りそうなもの。しかし、青春真っ盛りの女子学生はそんな謎なところも謎のまま、キュンとしたのだった。

それで良かったのだと思う。”棚からぼたもち”的にでも、学生時代の恋の勲章・第2ボタンを無事ゲットできて、ただただ本当に嬉しかったのだから。(大島智衣/脚本家、エッセイ・コラムニスト)

(ハウコレ編集部)

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