「誰にも言わないでほしいんですけど」の相談を、僕は飲みの席の話題にしていた

コラム

メッセージが3通、届きました。話したのは自分だと、誰にも分からないはずでした。僕がそう決めていた半年間の話です。

会議室から戻る途中でスマホが震え、画面には同じ部署の同僚の名前と、いつもと違う書き出しが並んでいました。

「もちろん」と打った指

同僚とは入社時期も近かったものの、業務の連絡以外で個別にメッセージが来ることはほとんどありませんでした。

「相談したいことあるんですけどいいですか?」

僕が「いいよ」と返すと、すぐ次が届きました。

「誰にも言わないでほしいんですけど」

「実は、営業部の人と付き合ってるんです」

自分が相談相手に選ばれたことが、少し誇らしかったのを覚えています。僕は迷わず打ちました。

「もちろん。誰にも言わない」

それから社内恋愛はどうしたら良いのかなど相談に乗り、そのままその話題は終わりました。

話題としてちょうどよかった

数週間後、先輩と2人で飲む機会がありました。僕は人と話すのが苦手で、いつも話題に困ってしまいます。沈黙が長くなったところで、頭に浮かんだのが同僚のチャットでした。

「あの人、営業部の人と付き合ってるらしいですよ」

言った瞬間、先輩の目が変わりました。「誰から聞いたの」と聞かれ、僕は「本人から」と答えました。それだけで、その席は大盛り上がりしました。僕は相手が誰なのかは知らないと繰り返しながら、会話が途切れない安心感の方を選んでいました。

店を出た後、僕は同僚とのチャットを開きました。「もちろん。誰にも言いません」の吹き出しが、送った時のまま残っています。先輩は口が軽いけれど、誰から聞いたかまでは広めない人だ。自分が話したことは、悟られないはずだ。そう決めて、画面を閉じました。

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