時差で5年すれ違い続けた「おはよう」が、初めて同じ時刻に並んだ日

コラム

「それもある」とだけ返して、彼の吹き出しは止まりました。残りの理由は、その日のうちには届きませんでした。彼は眠らずに、あの1件を送ってくれたのでしょうか。

アラームを止めた指で、そのまま「おはよう」と打ちました。海外に赴任している彼と付き合って、この日でちょうど5年になります。送信した直後の画面に、見たことのない並びが現れるとは思っていませんでした。

私のおはようは、彼のおやすみ

付き合ってすぐに彼の海外赴任が決まり、時差はほぼ半日。私が目を覚ますころ、彼は1日を終えようとしています。だから私の「おはよう」には、いつも「おやすみ」が返ってきました。私が布団に入る前に送る「おやすみ」には、彼の「おはよう」が返ってきます。同じ言葉が同じ画面に並んだことは、5年間で一度もありません。通話は月に数回、会えるのは年に2回ほど。それでも毎日の挨拶だけは途切れず、私はいつからか、言葉がすれ違うのを当たり前として受け取っていました。

同じ言葉が、同じ時刻に

送信した「おはよう」のすぐ上に、彼からの「おはよう」が表示されていました。時刻は、私の送信と同じ分です。画面を上に戻して、もう一度読みました。彼の側は、いつもなら「おやすみ」を送ってくる時間のはずです。起きていたのだろうか。それとも、寝ずに待っていてくれたのだろうか。想像は広がりましたが、確かめようがありません。

「起きてたの?」

「今日は合わせてみた」

「5周年だから?」

「それもある」

その次の吹き出しは届きませんでした。既読のまま、画面はそのまま止まっていました。

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