
「画面を保存する女は怖い」。そう送った俺のアルバムに残っていた1枚
コラム
「私は全部消しちゃったよ」。彼女からのその1行で、俺は自分が送った言葉の重さを初めて知りました。言い訳の代わりに送ったのは、消せずにいた十数枚の画面です。
取引先から戻る電車の中で、俺は流れてきた投稿を彼女にそのまま転送していました。深く考えたわけではありません。ただ、その1行が、あんな結果につながるとは思っていませんでした。
転送した1行の軽さ
彼女とは付き合って2年です。俺は営業職で、このところミスが続き、彼女への返信は遅れがちでした。
電車で目に入ったのは、やりとりを全部残しておく女性の話でした。指が勝手に動いて、彼女に送っていました。
「画面を保存する女は怖い」
「急にどうしたの」
「SNSで見た。証拠にするために全部残しとくやつ」
「そういう人もいるだろうね」
反応は薄いものでした。既読のあと、何も来ません。俺はそのまま仕事のチャットに戻り、その1行のことは頭から抜けていました。
消せずにいた1枚
本当は、俺のアルバムには彼女の名前のフォルダがあります。中身は、彼女から届いたメッセージの画面です。返信する余裕がなくて、読むだけで終わってしまった日のものばかりでした。
去年、大きなミスをした夜に届いた1行も、そこにあります。
「無理しなくていいよ。帰ってきたら一緒にごはん食べよう」
数日後の帰りの電車で、彼女に送るつもりで店の写真を選んでいたとき、隣に並んでいたその1枚に触れました。送信は取り消せませんでした。
「ごめん、間違えた」
自分が転送したあの1行を、そのときになって思い出しました。
次のページへ
彼女からの質問




























