
余韻の中で届いた「やっぱりレストラン代払ってもらっていい?」。冷めたのは金額だけではありません。
コラム
「送ったよ」と打ったあとも、レジで店員さんに向けられていた彼の声だけが残っていました。余韻の途中で届いた請求は、金額の問題ではなかったのだと、あとで気付きました。
部屋着に着替えてソファに座り、撮ったばかりの写真を1枚ずつ見返していました。デザートの皿と、向かいでピースをする彼。その画面の上に、彼の名前の通知が重なりました。
レジの前で少しだけ張った声
久しぶりに彼が予約してくれた店でした。付き合って2年、食事はいつも割り勘でしたから、伝票が来たときも財布に手を伸ばしかけていました。
「俺の奢りな!」
店員さんの方を向いたままの、少しだけ張った声でした。
「え、いいの?ありがとう」
店員さんが「ありがとうございます」と頭を下げて、彼がカードを渡します。珍しいなとは思いましたが、嬉しさの方が先でした。店を出てからは腕を組んで駅まで歩き、改札で手を振って、帰りの電車では写真を並べ替えていました。
余韻の途中で届いた請求
「やっぱりレストラン代払ってもらっていい?」
「いつもの送金アプリでいいから」
写真の上に重なった2通を、続けて2回読みました。ただ、頭に戻ってきたのは、店員さんの方を向いたままの、あの声でした。あの声は、店員さんに向けられていたように思えてなりません。
「わかった」
送金アプリを開いて金額を打ち込み、メモ欄に「レストラン代」と入れて送りました。
「送ったよ」
「ありがと!助かる」
続いて、彼のいつものスタンプ。返すスタンプの候補を上から3つほど眺めてから、画面を伏せてテーブルに置きました。
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「ちょっと予定確認する」と返すまでの間


























