
「仕事より俺を優先しろ」と送ってきた彼を、私は1週間放置した
コラム
ドアノブにかかっていた保冷バッグと、「ありがとう」から先が続かなかった私の返信。優先されなかった彼が怒っているのか、諦めたのか、答えの想像ばかりが膨らんでいきました。
頬に当たっていたのはキーボードでした。ビデオ通話の画面はいつの間にか終了していて、その下に彼からの1行だけが残っていました。展示会まで、あと5日という夜のことです。
「仕事より俺を優先しろ」の1行
「仕事より俺を優先しろ」。2年付き合ってきて、こんな言い方をされたのは初めてでした。通話の途中で寝落ちした自覚はあります。それでも、担当する展示会の準備で、この1週間は自分の食事すら後回しにしていた時期。画面を見つめたまま、返信を打っては消しました。結局送ったのは「今週は展示会の準備で無理。終わったらちゃんと話そう」。既読はすぐについたのに、返事はありませんでした。彼は料理人で、仕事終わりに必ず声だけでも聞かせてくれる人。その彼が、優先という言葉を選んだこと。翌日からの私は、彼のアイコンが光るたびに画面を伏せるようになっていました。
ドアノブにかかっていた保冷バッグ
3日目、終電で帰ると、玄関のドアノブに見覚えのない保冷バッグがかかっていました。中にはラップに包まれたおにぎりが3つと、まかないの煮物。チャットを開くと「ドアノブに袋かけといた」の一言だけ。「ありがとう。でも今は本当に余裕がないの」と返し、既読がつくのを見届けて、スマホを裏返しました。うれしくなかったわけではありません。ただ、おにぎりを食べながら考えていたのは、これも優先しろの続きなのかということでした。食べさせて、会わせて、自分の言うことを聞かせたいのだろう。そう決めつけたまま、レンジの音だけが部屋に響いていました。
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展示会が終わった日


























