
「隠し事は裏切りだと思う」と言った俺が、週末は「実家の手伝い」とごまかして陶芸教室に通っていた
コラム
彼女のために作っているものがあると、俺はどうしても自分から言い出せませんでした。その言い訳が通用しなくなったのは、モールのガラス窓の前です。
作業台の上で、ろくろのモーターが低くうなっていました。先生に何度直してもらっても、器の縁は片側だけ薄くなってしまいます。どうにか形になったのは、教室に通い始めて11回目のことでした。
割れたマグカップと、大きすぎた言葉
3か月ほど前、彼女が俺の部屋でマグカップを割ってしまいました。付き合って初めての旅行中に買った、思い出深いマグカップでした。
「もう売ってないんだよね」
破片を新聞紙に包みながら、彼女は笑っていました。あとで調べると、その店はもう閉まっていました。それならいっそ作ろうと、モールの陶芸教室に申し込んだのはその週のうちです。
半年ほど前、俺は彼女に「隠し事は裏切りだと思う」と言っています。サークル仲間との集まりを、SNSの写真で後から知った日のことでした。本当は、自分だけが知らされていなかったことが嫌だっただけです。裏切りという言葉は、あのとき選ぶには大きすぎました。
それなのに、週末の予定を聞かれるたび「実家の手伝い」とごまかしてました。完成する前に打ち明けてしまえば、意味のわからない器の話だけが先に届いてしまう。それが怖くて、言い訳を重ねていたのです。
ガラス窓の前で選べなかった順番
休みが重なった日、彼女と教室のあるショッピングモールに出かけることになりました。彼女の行きたがっていたお店に行くには教室の前を通るしかありませんでした。教室の反対側を歩いたつもりでしたが、先生はすぐに俺を見つけて出てきました。
「次もいらっしゃいますか?作品、窯から出ましたよ」
「あとで連絡します」
それだけ返して、エスカレーターのほうへそそくさと立ち去りました。ベンチのそばで追いついた彼女に「週末って、実家の手伝いじゃなかったの?」と聞かれ、「ごめん。今はまだ言えない」と答えるのがやっとでした。
「隠し事は裏切りって言ったの、そっちだよね」
「うん、言った」
自分の言葉をそのまま返されて、返す言葉が見つかりません。ここで話せば、器は棚に置いたまま、3か月間ついてきた嘘だけを先に聞かせることになります。その順番を、どうしても選べませんでした。
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器より先に伝えたこと




























