彼女の「今日は気分じゃないかな」に慌てた俺。2年間、その言葉を使っていたのは自分のほうだった

コラム

「俺なんかした?」と聞いても、彼女は首を横に振るだけ。理由の見えない言葉の前で、何をすればいいのか分からなくなっていました。自分が同じ言葉を使ってきたことも忘れて。

言いやすかった「気分じゃない」

人が多い場所に行くと、帰るころにはぐったりしてしまう。行列のできるラーメン店も、公開初日の映画館も、割引キャンペーン中の水族館も、本当はそれが理由でした。

出かけるのが好きな彼女の誘いを、苦手という理由で断るのは気が引けます。「今日は気分じゃない」と言えば、誰のせいにもならない。彼女はいつも「じゃあまた今度ね」と笑ってくれたので、それで済んでいると思い込んでいました。

だから、キッチンで聞いた「今日は気分じゃないかな」が、うまく飲み込めなかったのです。ハンバーグが嫌なのか、俺と食べるのが嫌なのか、それとも仕事で何かあったのか。理由のない言葉には、受け取る側からつかめる手がかりがどこにもありませんでした。

手がかりを探し続けた数日間

思いつく限りの候補を挙げ、食べられそうなものを思いつくたびに買い足し、冷蔵庫の中身だけが増えていきました。帰ってくる時間に合わせて玄関で待ちました。彼女の顔を見れば、何か分かる気がしたからです。返ってくるのは短い返事ばかりで、食べ物を挙げても首を横に振られました。

何もしないで待っている間に、気持ちが離れていったらどうしよう。そんな想像ばかりが先に立ち、そっとしておくという選択肢は頭に浮かびもしませんでした。

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