「私が1日休んだぐらいで回らなくなるなんて、先輩は仕事の管理ができないんですね」嫌味な先輩に返した一言

コラム

予定表の来週の日付には、先輩の字で「休」と書き込まれました。さっきまで島の向かい側まで届いていた声は、もう半分もありません。私はそれ以上、何も付け足しませんでした。

有休の申請画面に来週の日付を入れかけて、手を止めました。課長から言われたことが、まだ耳に残っています。私は先に、休暇の予定表を持つ先輩の席へ向かいました。先輩は予定表から顔を上げないまま、ペンを握っていました。

島の向かい側まで届いた声

私は入社3年目の事務職です。同じ島に座る先輩は部署で一番長く働いていて、休暇の予定表も先輩が管理しています。その日、課長に呼ばれて言われたのは、有休の取得が足りていないから、今月中に1日は必ず取るようにという指示でした。会社として決まっていることだから、と課長は付け加えました。席に戻り、予定表を持っている先輩に声をかけました。

「来週、1日有休をいただきます」

先輩は顔を上げないまま、ペンを止めました。

「有休とるの?皆頑張ってるのに」

島の向かい側まで届く声でした。向かいの席の同僚がキーボードを打つ手を止めたのが、視界の端に見えました。

「課長に言われたんです。今月中に1日は必ず取るようにって」

先輩はそこでようやく顔を上げ、口の端だけで笑いました。

「課長は現場のこと分かってないから。あなたが抜けた日、電話は誰が取るの?私?」

私が答える前に、先輩はまた予定表に目を落として続けました。

「3年目で先に有休の話をするなんて、余裕あるのね」

私に言われても困ります

以前の私なら、笑ってごまかして席に戻っていたと思います。でもその日は、自分で決めた休みではありませんでした。会社に取るように言われて、その通りにしているだけです。それを責められる理由が、どこにあるのか分かりませんでした。

「会社に言われて取るんです。私に言われても困ります」

先輩は返事をせず、ペンの先で予定表を叩きました。私は先輩の手元を見ながら続けました。

「私が1日休んだぐらいで回らなくなるなんて、先輩は仕事の管理ができないんですね」

ようやく上がった顔は、蛍光灯の下で白く見えました。先輩は課長の席の方を一度だけ見て、それから私に視線を戻しました。

「……そう」

声は、さっきの半分もありませんでした。先輩は予定表を閉じ、自分のモニターの方へ体を向けました。私は席に座り直し、申請画面に来週の日付を入れて送信しました。

次のページへ

隣に立った先輩
  • X
  • Line