台風の前になると勝手に動くベランダの鉢→仕切り板の下に残っていた痕跡

コラム

白い石は土の上に載ったまま、床の土の粒だけが仕切り板の下の隙間へ続いていました。隣の人とは、郵便受けで一度すれ違ったきりです。

ベランダに出ると、バジルの鉢が壁際に寄せてありました。私は鉢を手すりの足元にしか置きません。1人暮らしの部屋でそれが勝手に動くはずはないのですが、天気予報は台風の接近を告げていました。

動くのは、端の2鉢だけ

賃貸アパートの2階角部屋で、ベランダには4つの鉢を並べています。手すり沿いに、仕切り板に近い方からバジル、ミント、レモンの木、オリーブの順です。バジルとミントは片手で持てる小さなプラスチック鉢で、レモンとオリーブは重い陶器の鉢です。動いていたのはバジルとミントの2鉢だけで、奥のレモンとオリーブは元の位置のままでした。

去年にも一度、同じことがあった気がします。あのときは自分で寄せて忘れたのだと思い込んでいました。仕切り板には「非常時にはこの板を破って避難できます」と書いてあり、その下には手のひらが入るほどの隙間が空いています。私は板の前にしゃがみ、隙間の向こうを、しばらく見ていました。

仕切り板の下に残っていた土

台風が過ぎ、2鉢を元の場所に戻してから、私は小さな目印を置くことにしました。バジルの土の上に白い石を1つ、ミントの鉢の縁には輪ゴムを1本。次の台風の予報が出た日、出勤前に鉢の位置を写真に撮りました。

帰宅してベランダに出ると、2鉢はやはり壁際に寄せてありました。白い石は土の上に載ったままで、輪ゴムも外れていません。底を滑らせて丁寧に運んだ動き方でした。床には土の粒が点々と落ちていて、その跡は仕切り板の下の隙間に向かって続いていました。

隙間からのぞくと、隣のベランダの隅に、うちのミントの葉が1枚落ちているのが見えました。隣の人とは、挨拶をしたことがありません。郵便受けの前で一度すれ違っただけで、そのとき私はイヤホンをしていて、顔も見ないまま通り過ぎました。

名前も知らない相手が、私の鉢に触っている。

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隙間から見えた軍手
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