娘が実家に忘れたぬいぐるみを捨てた私が、返信の一文で知った「くらい」の重さ

コラム

娘が泊まっていった部屋の枕元に、うさぎのぬいぐるみが残されていました。耳の先がほつれて、綿がのぞいています。断捨離で床に並べた袋の横に置いて、写真を1枚撮りました。

「捨てとくね」は確認のつもりだった

娘には少し前から「いらないものは言ってね」と何度かメッセージを送っていました。返事はありませんでした。

写真に添えたのは「これ捨てとくね」の一言です。娘が幼稚園の頃に買ったもので、置いていったのなら、もう手放したのだろうと思っていました。

既読はつきませんでした。収集車が来る前に出さなければ、次は1週間先になります。私は袋の口を結び、ぬいぐるみを一番上に入れて、集積所まで運びました。

家に戻って洗い物を始めた頃、通知が続けて鳴りました。

「待って、それ捨てないで」

「先週忘れていっただけなの」

私は蛇口を止めて、濡れた手のままスマホを持ち直しました。

「ごめん、もう出しちゃった」

「ボロボロだから捨てていいのかと思った」

「くらい」と打った指

それでも、あの時の私はまだ、大したことではないと思っていました。

「もう大人なんだし、ぬいぐるみくらいいいでしょ」

返事は少しして届きました。

「くらい、じゃないよ。ずっと一緒だったの」

「それ、私の何よりも大切なものなんだよ」

私は謝りの言葉を打ちかけて、消しました。言い訳を打ちかけて、また消しました。ずっと一緒だった、という言葉の意味を、私は考えたことがありませんでした。娘がこの家を出てから何年も、うさぎがどこにいたのか、聞いたこともなかったのです。

返信をやめて、玄関の鍵を取りました。

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空になった集積所
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