彼女の分までまとめて払うと、笑みが消える→その理由は財布の奥の「返す分」の封筒にあった

コラム

拾い上げた封筒の表には、彼女の字で「返す分」とありました。裏には、俺が会計を断った日の日付が並んでいました。

レジで彼女の分までまとめて払うと、彼女の口元から笑みが消えました。付き合って1年、デートのたびに繰り返してきた光景です。俺にはその理由が、わからないままでした。

会計はいつも俺がまとめて

付き合って1年になる彼女は事務の仕事をしていて、俺より給料が少ないと本人から聞いていました。だから会計は、俺が先に済ませるのが習慣になっていました。彼女が財布を出しながら「私も半分出すよ」と言うたび、俺は「いいよ、俺が出したいだけだから」と返してきました。2か月ほど前、彼女が「この前の分」と言って千円札を差し出したこともありましたが、俺は「そんなの気にしなくていいよ」と押し返しました。

ところが、レジから席へ戻るたび、彼女の返事は「ありがとう」だけで、そのあとの会話がどこか短くなるのです。

「機嫌悪い?」と聞いても、「別に」と首を振るだけでした。俺は、お金のやり取りをさせること自体が彼女を気まずくさせているのだと考え、次からは彼女が財布を出す前に会計を済ませるようになりました。そのたびに、彼女の口数はまた減っていきました。

水族館の帰り、テーブルに落ちた封筒

その日は水族館へ行き、帰りに駅前のカフェへ寄りました。会計は例によって俺が済ませ、窓際の席に戻ると、彼女は財布を開けてポイントカードを探していました。カード入れの奥から、折りたたまれた白い小さな封筒が滑り落ち、テーブルの上で俺のほうへ開きました。

拾い上げた表には、彼女の字で「返す分」と書いてありました。中には千円札が何枚か入っていて、封筒の裏にはここ2か月ほどの日付と金額が並んでいます。俺がまとめて払った日の日付でした。

「これ、なに」

彼女は封筒に手を伸ばしかけて、途中でやめました。

「あなたが払ってくれた私の分。返そうとしても、受け取ってくれないから」

俺は封筒を裏返し、並んだ日付と金額を見ました。

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