
彼がまとめて払うたび、千円札を封筒へ→「返す分」の封筒が見つかった日に言えたこと
コラム
彼に返すつもりで始めた封筒は、受け取ってもらえない日が続くうちに、少しずつ意味を変えていきました。見つかった日にようやく言えたのは、してもらう側に固定されたくないという本音です。
会計を終えた彼が、私の分までまとめて払って財布を閉じました。私が出そうとしていた分は、いつもそこで行き場をなくします。ありがとうと言いながら、素直に笑えない自分がいました。
「ありがとう」の先が続かない理由
彼と付き合って1年になります。営業の仕事をしている彼と事務職の私では、給料に差があるのは確かでした。だから彼がまとめて払ってくれるのが思いやりからだということは、疑ったことがありません。
それでも、会計のたびに「私も半分出すよ」と財布を開ける私に、彼はいつも「いいよ、俺が出したいだけだから」と笑って言います。ありがとう、と返す。それしか言葉が続かないのです。席に戻ってからの会話も、自分でも不思議なくらい短くなります。彼に「機嫌悪い?」と聞かれても、「別に」と首を振ることしかできませんでした。何が嫌なのか、自分でもうまく言えなかったからです。
彼の気遣いだということは分かっていました。それでも、財布を閉じるたびに、財布を閉じる回数が増えるほど、行きたい店まで言いにくくなっていました。高い店を選べば図々しく、安い店を選べば気を遣わせている。どちらにしても決めるのは払う人だという気がして、私は希望を言わなくなっていました。
封筒に千円札を1枚ずつ
2か月ほど前、彼が払ってくれた私の分を、次に会ったとき「この前の分」と言って千円札を差し出しました。彼は「そんなの気にしなくていいよ」と押し返します。その日から、直接渡すのをやめました。
実家を出て自分の給料で暮らし始めたとき、決めたことがあります。少なくても、自分の分は自分で持つということです。その代わりに、白い小さな封筒を用意しました。それからは、彼が私の分まで払った日だけ、自分が出すつもりだった金額を日付と一緒に裏へ書き、その分のお金を入れるようになりました。使ってしまえば、なかったことになる。でも取っておけば、私が出すはずだった分は、私のお金として残ります。自分が受け取るだけの人ではないと確かめるためだけの封筒でした。
表に「返す分」と書いたのは、返せないとわかっていても、その言葉を消したくなかったからです。カード入れの奥に折って挟んでいました。千円札は、2か月ほどで何枚かになっていました。彼に見せるつもりはありませんでした。見せれば、責めているように聞こえるとわかっていたからです。
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見つかった日に、はじめて言えたこと

























