
誕生日の前日に「推しがいる女は無理」と言った彼が、ライブ会場に来ていた
コラム
無理だと言った人が、私を探していた
開場のアナウンスが流れ、彼は「先に入ってる」と入口の方を指しました。彼の背中が人波に紛れていくのを、その場で見送ります。来ると知っていれば、一緒に入ればよかったのに。そう思ったあとで、先に知らされていたら断っていたかもしれない自分にも気づきました。
半年前の言葉と、今日の姿が、頭の中で噛み合いませんでした。嫌いなら来なければいい。来るなら、先に言ってくれればいい。どちらでもない行動を、どう受け取ればいいのかわかりません。
フロアに入ると、少し離れた前の方に、人の肩越しに黒いリュックが見えました。周りの人がペンライトを振り始めても、彼の手元だけが暗いままでした。
そして...
1曲目が始まっても、彼はペンライトの袋を開けられずにいました。隣の人に何か言われて、やっと光ります。振り方もわからないまま、周りより半拍遅れて揺れる青い光。
その光を見ながら、自分のペンライトを、いつもより低く持っていました。半年前から押し入れにしまい込んでいた光を、彼の前で高く掲げていいのか、決められずにいたからです。
終演後、出口の近くで彼が待っていました。
「楽しかった?」
半年前なら、「まあまあ」と答えていたと思います。
「楽しかった」
そう返すと、彼は「そっか」とだけ言って、私の手の中でまだ光っているペンライトを見ました。その光を、しまわずに歩き出しました。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)


























