彼への面接になりかけた実家の食卓で、「それ私にも聞いて」と父に返した私

コラム

彼が怖がっていたことは、食卓で本当に起きました。箸を持ったまま答えられずにいる彼の隣で、私は父に、同じことを私にも聞いてほしいと言いました。

玄関のチャイムを押す前に、家の中から父の咳払いが聞こえました。

断られる練習をしていた2日間

帰省したとき、父から「一度くらい、連れてこい」と言われていました。3年付き合って、私の部屋には彼の歯ブラシもあります。それでも半年近く言えずにいて、やっと切り出した日、私は皿を持って背中を向けたまま「来月、うちの親に会ってほしいの」と言いました。顔を見ていたら、断られたときに立て直せないと思ったからです。

返ってきたのは「ちょっと、考えさせて」でした。「うん。急がなくていいよ」と返した私は、その一言を断りの前置きに変換していました。

翌日、「無理に返事しなくていいよ」と送りました。逃げ道を用意したつもりで、本当は、断るなら早く済ませてほしかったのだと思います。既読はすぐつき、返事は来ませんでした。職場の休憩の間に、断られたあとの自分を何通りも想像しました。親には何と言うか、歯ブラシはいつ捨てるか、3年を無駄にしたと思わずにいられるか。休憩室の窓から駐車場の車を数えながら、彼が言いそうな断り文句の候補まで代わりに考えていたことに気づいて、自分で少し笑いました。

怖いまま来て、と言ったあとの電話

2日後、部屋に来た彼は、玄関で靴を脱がないまま言いました。

「かっこ悪いけど、今の俺は君の親に会うのが怖い」

私が用意していた断りの、どれとも違う言い方でした。彼が怖がっていたのは、うちの親でも結婚でもなく、親の前に座る自分の姿のようでした。「じゃあ、怖いまま来て」と返して、私はその場で日を決めました。

彼が帰ったあと、父に電話をかけました。

「彼、かなり緊張してるみたい」

「こっちだって緊張する」

父はそう言いながら、「何を出そうか」と当日の献立を何度も変えていました。品定めをする側だと思っていた父も構えているのだと知って、私は少しだけ楽になり、それを彼には伝えませんでした。

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