彼への面接になりかけた実家の食卓で、「それ私にも聞いて」と父に返した私

コラム

彼ひとりの面接ではなくなった食卓

当日、玄関を開けたのは父でした。あの日は私の部屋の玄関でしばらく立ち止まっていた彼が、実家では上がり口で靴を揃えて脱ぎました。天気や仕事の話が一段落したころ、父が湯のみを置きました。

「娘と結婚するなら、生活は大丈夫なのか」

電話の声からは想像できない、まっすぐな聞き方でした。彼は箸を持ったまま、口を開きかけては閉じました。答えに詰まる彼を見て、部屋の玄関で聞いた怖さは、これのことだったのだと思いました。父の目は彼から動きません。私はグラスを置いて、言いました。

「お父さん、それ私にも聞いて」

父が私を見ました。

「私も働いてるし、私にも貯金はあるよ。結婚するの、彼だけじゃないから」

父はしばらく黙り、それから言いました。

「じゃあ、お前はどう考えてる」

そこから先は、彼ひとりの面接ではなく、2人の話になりました。私が答え、彼が足し、父がまた聞く。止まっていた彼の箸が動きはじめたのは、そのあとでした。

そして...

怖いまま来てと言ったとき、私は彼を励ましたつもりでした。それが怖い場所に一緒に立つことだと気づいたのは、父の前で口を開いた私に、彼のほうが驚いた顔をしていたからです。彼はひとりで答えなくていいことまで、ひとりで答えようとしていました。そのことに、父の前でやっと気づきました。

(20代女性・歯科助手)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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