
送った直後に後悔した。「俺を優先しろ」の前に消した、本当の一言
コラム
画面の中で、彼女の頭がゆっくり落ちていきました。打ち込みかけていた言葉を全部消して、代わりに送ったのは、自分でも信じられない1行でした。
まかないの残りを保冷バッグに詰めながら、自分が送ったメッセージを何度も読み返していました。「仕事より俺を優先しろ」。閉店後の厨房で、この1行を書いた人間が自分だとは思いたくありませんでした。
消した文章と、残った1行
通話の前に、俺はひとつの文章を用意していました。「一緒に住まないか」。展示会が終わる頃に鍵を渡せるように、不動産屋の内見予約まで取ってあった。画面の彼女は、資料を片手にうなずきながら、途中から返事が短くなり、やがて頭がゆっくり落ちていきました。手に持ったままの資料。開いたままのパソコン。それを見て、用意した文章を打ち込みかけて、全部消しました。寝落ちしそうな相手に同棲の話をしても、聞こえない。代わりに残ったのが、あの1行です。送った直後、既読がつかないことに、正直ほっとしていました。
返事のない既読
目が覚めたらしい彼女から届いた返信は「今週は展示会の準備で無理。終わったらちゃんと話そう」。ちゃんと話そう、の一言が、俺には別れ話の予告に読めました。謝る文面を打っては消し、そのうち既読だけ残して閉じてしまいました。言い訳を書けば書くほど、優先しろと言った事実が濃くなる気がしたからです。できることは、店の仕込みの延長で、おにぎりを握ることだけ。「ドアノブに袋かけといた」とだけ送って、返事を見ないまま帰りの電車に乗りました。「ありがとう。でも今は本当に余裕がないの」。その文面を見たのは、翌日のまかないの時間です。
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展示会が終わった日


























