
「今の、行けたでしょ」と笑い続けた友人→山道で対向車が現れた途端、助手席が黙り込んだ
コラム
先の見えないカーブで対向のワゴン車が現れ、私は待避所まで下がって道を譲ります。走り出したとき、来るはずだった言葉が来ませんでした。
交差点で止まった途端、助手席の友人がダッシュボードを軽く叩いて笑いました。まだ市街地を出てもいないのに、これで3度目です。展望台までの道のりは、私が思っていたよりずっと長くなりそうでした。
「ブレーキ早すぎない?」が10分続いた市街地
学生時代からの友人と展望台へ行くことになり、車を出すのは私に決まりました。友人は免許を持っていません。私は免許を取って5年、乗るのは実家に帰ったときくらいですが、交通ルールを守って走ることに自信がなかったわけではありません。
出発してすぐ、友人が言いました。
「ペーパードライバーなのに大丈夫?」
「大丈夫だよ。普通に走るだけだから」
そう返したのですが、そこからが長かった。信号が黄色に変わって止まれば「ブレーキ早すぎない?」、右折で対向車を1台やり過ごせば「今の、行けたでしょ」、住宅街で制限速度を守って走れば「遅っ」。1つひとつは冗談の口調でしたが、10分も続くと、笑い返す間隔が開いていきました。
運転していない人に言われたくない。何度もそう思いました。でも、口に出せば空気が悪くなる。久しぶりに会えた日にそれは嫌で、私は「はいはい」と流しながら、十分に車間距離をあけたまま走り続けました。信号待ちのたびに友人は窓の外を指して、隣の車線の車が先に出たと報告してきます。
対向車が現れたカーブで、私は迷わず下がった
市街地を抜けて、道のセンターラインが消えました。両側は杉の斜面で、カーブの手前には黄色い看板が並んでいます。私は看板のたびに速度を落とし、ハンドルを切る前に必ずミラーを見ました。
「そんなに減速する?」
「後ろ来たら迷惑じゃない?」
友人はまだ言っていました。後ろには誰もいません。私は返事をせず、次のカーブに集中しました。この道で速く走る理由が、私にはひとつも見つからなかったからです。ガードレールの向こうは谷で、下には川の音がしています。
杉の幹に隠れた先の見えないカーブを回りかけたとき、対向のワゴン車が現れました。道幅は明らかに2台分ありません。私はブレーキを踏み、バックミラーで後方を確かめてから言いました。
「ちょっと下がるね」
30メートルほど後ろに、砂利敷きの待避所があるのをさっき見ていました。私はそこまで慎重に下がり、ワゴン車を通しました。運転手が窓越しに手を上げて、ゆっくり通り過ぎていきます。
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軽口を待避所に置いてきたような助手席

























