免許もないのに「ブレーキ早すぎない?」と言い続けた私→山道で対向車が現れ、言いかけた言葉を飲み込んだ

コラム

「行けるでしょ」と言いかけて、私は止まりました。自分では1度も踏んだことのないペダルの話を、ここまでずっと続けていたことに気づいたからです。

出発して最初の信号で、友人のブレーキが早いと感じた瞬間、私は笑っていました。免許は持っていません。それでも助手席の経験だけは長くて、運転のことは分かっているつもりだったのです。

免許はないけれど、運転は分かっているつもりだった

父の車、元恋人の車、先輩の車。助手席には数えきれないほど乗ってきました。

「ペーパードライバーなのに大丈夫?」

「大丈夫だよ。普通に走るだけだから」

その「普通」が、物足りなく見えました。黄色信号で止まれば「ブレーキ早すぎない?」、右折で1台待てば「今の、行けたでしょ」、住宅街で「遅っ」。元恋人ならここは行っていた。父なら止まらなかった。そういう比較が、口から勝手に出ていました。信号待ちで隣の車が先に出れば窓の外を指して報告し、ダッシュボードを叩いて笑う。友人が「はいはい」と流すのを見て、まだ言える、と思っていたのです。

「行けるでしょ」と言いかけて止まった待避所

センターラインが消えて、道の両側が杉の斜面になっても、私の癖は止まりませんでした。

「そんなに減速する?」

「後ろ来たら迷惑じゃない?」

後ろに車がいないのは見えていました。それでも言った。友人は返事をせず、看板のたびに速度を落として、ハンドルを切る前にミラーを見ていました。

そのとき、前のカーブからワゴン車が出てきました。道は2台分ありません。友人はすぐにブレーキを踏んで、後ろを確かめてから言いました。

「ちょっと下がるね」

私は「行けるでしょ」と言いかけて、止まりました。どこへ行けるのか、自分でも分からなかったからです。友人はさっき通り過ぎた待避所まで、ゆっくり下がりました。私はそんな場所があったことにも気づいていませんでした。ワゴン車の運転手が手を上げて通り過ぎていくのを見ながら、私は膝の上のスマホを裏返しにしました。

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