免許もないのに「ブレーキ早すぎない?」と言い続けた私→山道で対向車が現れ、言いかけた言葉を飲み込んだ

コラム

父も元恋人も、きっと同じことをした

ここまでの1時間、私は何を言っていたのだろう。ブレーキが早い、行けたでしょ、遅い。全部、自分では1度も踏んだことのないペダルの話でした。父も元恋人も、たぶんこの道では友人と同じことをしたはずです。

それからは、口が開きませんでした。怖かったからではありません。看板で減速し、ミラーを見て、車間をあけて走る友人の横で、もう何を言っても、さっきまでの自分に返ってくる気がしたのです。

そして...

駐車場でサイドブレーキの音がしました。

「着いたよ」

うなずいて車を降り、自販機で缶コーヒーを2本買いました。1本を渡して、町を見下ろしながら言えたのは「帰りもよろしく」だけでした。何から謝ればいいのか、まだ整理がつかなかったのです。

帰りの山道で、私はひとことも口を出しませんでした。センターラインが戻り、市街地の最初の信号で止まったとき、やっと言えました。

「さっきまで、ごめん。あの待避所があったのも私、全然気づいてなかったのに。ずっと偉そうに言ってた」

友人は前を見たまま答えました。

「ほんとだよ」

「もう運転に口出ししないから許して」

いつもの口調に戻して、ダッシュボードを軽く叩きました。走り出した車の中で、この人の運転で来られてよかったと思いました。

謝りたかったのは、言いすぎたことだけではありません。分かったつもりで口を出していた自分が恥ずかしかった。そのことまでは、まだ言えていません。

(30代女性・販売職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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