
もらった物に必ず点をつける母→義妹の手土産を「あとでいただくね」とだけ言って棚に置き続けた私
コラム
「そういうんじゃないの」。台所でそれしか言えなかった私が、本当は何を言うつもりだったのか。母と2人になった居間で、私は小さな嘘を1つ足しました。
廊下の向こうで、母が漬物の瓶を持ち上げてはしゃぐ声が聞こえました。玄関で受け取ったばかりの箱を、私は脇の棚へ置きました。義妹の手土産を母の前で開けたことは、3年前から1度もありません。
母は必ず点をつける
母は、人からもらった物に必ず点をつけます。私が嫁いだ年、初めて持って帰った焼き菓子を「前に隣の奥さんがくれたのと同じね」と言われました。それからは、実家に何を持っていくか考える時間が、帰る前の楽しみを食い潰すようになりました。
だから義妹の箱を、母の前では開けません。開けて味を褒めれば、母は必ず前の物と比べ始めます。次の帰省から、義妹は私と同じ場所に立たされることになる。それが分かっているので、受け取る時の言葉はいつも決めています。
「ありがとう。あとでいただくね」
台所で聞かれた
食器を運んだ台所で、義妹と2人になりました。蛇口の音の下で、義妹が聞いてきました。
「甘いもの、お好きじゃなかったですか」
皿を拭く手を止めないまま、答えを探しました。点数のこと、嫁いだ年の焼き菓子のこと。順番に話せば、義妹は母のことを嫌いになるだけだと思いました。
「そういうんじゃないの。気にしないで」
言い終わってから、これでは何も伝わらないと分かりました。続きを言うために息を吸ったところで、廊下から母の足音がしました。
「何の話?」
「何でもない」
拭き終えた皿を棚へ戻しながら、義妹が濡れた手を布巾で拭くのを横目で見ていました。
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玄関で渡した瓶


























