
席次表で私を育てた人の欄だけが空白→プランナーに詰め寄った私が、伯母の台所で知ったこと
コラム
台所で聞いた、空けておいた理由
台所で夕飯の支度をしていたおばちゃんは、校正紙を見せると火を止めました。
「空けておいてって、私が頼んだの」
「なんで。育ての親って書きたかったのに」
「伯母と書けば、あなたを育てた日のことはどこにも残らない。母と書けば、あなたのお母さんから取ることになる。だから、あなたが呼ぶ名前で呼ばれるまで、空けておきたかったの」
私が呼んできた名前。おばちゃん、としか呼んでこなかった。母でも伯母でもない呼び方を20年以上そのまま使い続けて、それが何にあたるのか、一度も決めてこなかったのです。鍋の湯気の向こうで、おばちゃんは校正紙の空欄を指でなでていました。
「そこは、あなたが埋めて」
返事をしないまま、私は鍋の火をつけ直しました。
そして...
当日の謝辞で、私は原稿にない一言を足しました。
「席次表の空いたところは、私がずっと呼んできた名前のための場所です。おばちゃん、ありがとう」
親族席のおばちゃんは、テーブルの席次表に手のひらを重ねたまま、頭を下げていました。空欄のまま印刷した1枚を、今も引き出しに入れています。何も書かれていないのに、そこだけ字が濃く見える1枚です。引き出しから出すたびに、その空欄へ手のひらを重ねてみます。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)



























