
「専業主婦になれ」と送った直後に既読→返ってきた質問で、俺は自分が削った言葉に気づいた
コラム
「俺のため」と打つまでに、消した言葉が1つありました。彼女に届いたのは、削りに削った残りです。既読はついたのに返信は来ず、畳み終えた洗濯物の横で、通知の来ない画面をつけ直していました。
洗濯機が止まる音で、スマホの画面に目を戻しました。届いていたのは、婚約者からのいつもの短い報告です。「今日も終電。来月も同じらしい」。その下の入力欄には、打っては消していた言葉が残っていました。
打っては消した、長い1文
「俺の給料だけで生活できるようにしてあるから、無理して働かなくていい」。
式の日取りを決めてから、彼女のメッセージに終電という言葉が入っていたのは、これで12回目でした。数えていたのは、会う日を決められないまま1ヶ月が過ぎていたからです。入力欄に残ったその1文を読み返して、消しました。終電のホームにいる人に送るには、上から目線に見えたからです。
代わりに打ち直したのは「俺が養うから、もう無理しなくていい」。まだ長いと感じて、また削ります。残ったのが、あの短い命令形でした。
「専業主婦になれ」
送ってすぐ、既読がつきました。返信は来ません。今頃、電車の中で読んでいるのだろうか。洗濯物を畳みながら、通知の来ない画面を何度もつけ直しました。
既読のまま、届いた質問
「それは、私のため?それとも、あなたのため?」
畳み終えた頃に届いた質問でした。「彼女のため」と打てば、格好はつきます。でも嘘になる。倒れた彼女を迎えに行く自分を想像するのが、ただ怖かっただけでした。式の日まで彼女の体が持つかどうか。この1ヶ月、それしか考えていませんでした。
「俺のため」
「倒れるまで働くのを、隣で見てられない」
「なれ、って命令されると、心配してるんじゃなくて、私の仕事を軽く見てるように聞こえた」
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削ったのは長さではなかった




























