「暇なの?笑」と笑った私→いつもより3本早い電車で、彼より先に時計台の下に立ってみた

コラム

彼を驚かせるだけのつもりで、ふだんより早い電車に乗った日。待つ側に立ってみて初めて、彼の「まあね」が少し違って聞こえ始めました。

駅の東口にある大きな時計台の下で、改札から出てくる人の顔をひとりずつ目で追っていました。約束の時間までは、まだ25分あります。付き合ってから、この場所に先に立っているのはずっと彼のほうでした。

先に立っているのはいつも彼

付き合って1年になる彼は、待ち合わせに毎回15分ほど早く着きます。約束の時間ちょうどに改札を出ると、時計台の下からこちらへ手を上げる。それが私たちのお決まりでした。

この前もやはり彼が先で、つい笑ってしまいました。

「暇なの?笑」

彼は「まあね」と笑っただけで、それ以上は何も言いません。からかったつもりだったのに、あっさりした返事に少し物足りなさが残りました。

それなら一度くらい、彼より先に着いて驚かせてみたい。次の約束の日、ふだんより3本早い電車に乗りました。

待たせるつもりで来た時計台の下

改札を抜けて時計台の下を見ると、彼の姿はありません。先に着けたことがうれしくて、柱の横に立って改札のほうを向きました。

ところが、5分もしないうちに落ち着かなくなってきます。電車が着くたびに人がまとまって出てきて、そのたびに顔を確かめてしまう。似たコートの人が見えると背伸びをして、別人だと分かるとスマホに目を戻す。その繰り返しでした。

メッセージを開き、「東口の時計台の下ね」という彼の文面を読み返します。西口にも時計台があった気がして、改札がよく見える位置まで移っては、また柱の横へ戻りました。

余裕で彼を迎えるつもりだったのに、そわそわしているのはこちらのほうです。

次のページへ

隣に並んだ彼の横顔
  • X
  • Line