
「かわいいね」の一言だけが返ってきた→愛犬の写真に込めた俺の「会いたい」は、届いていなかった?
コラム
ドアを開けた瞬間、こいつは俺より先に彼女のもとへ駆けていきました。足もとに落とされたのは、この1か月、寝床から一度も離さなかったものです。
エレベーターの止まる音がするたびに、愛犬は玄関まで走っていき、ドアの前に座り込むようになりました。彼女が仕事で来られなくなって、1か月。その小さな背中を見ているのは、俺だけでした。
ソファの下から出てきたもの
付き合って2年になる彼女は、以前は休みのたびにこの部屋へ来ていました。初めて来た日に持ってきてくれたのが、黄色いアヒルのおもちゃです。中の鳴き笛が鳴ると、こいつは今でも耳を立てます。
掃除機をかけていると、ソファの下からピンク色の靴下が片方だけ出てきました。彼女が前に脱いだまま、忘れていったものです。つまみ上げた途端にこいつが飛びついてきて、口から離そうとしません。アヒルには見向きもせず、靴下をくわえたまま玄関のほうへ運んでいきました。
そのままでは飲み込みかねないので、靴下を固く結んで、おもちゃ代わりにしました。それからずっと、こいつの寝床にはピンク色のおもちゃの結び目があります。
写真だけで伝わると思っていた
ラグの上で結び目をくわえて寝そべる姿を撮って、彼女に送りました。添えたのは「最近これがお気に入り」だけです。
見れば分かると思っていました。自分の靴下だと気づいてくれれば、こいつが会いたがっていることも伝わる。本当は、会いたいのは俺も同じでした。ただ、仕事が山場だと聞いていたので、言葉にすることはできませんでした。俺が言えば、彼女は無理をしてでも来ようとするはずです。それで困らせるのが怖くて、犬の写真に全部を任せていました。
返ってきたのは「かわいいね」の一言でした。気づかなかったのか、気づいても返す余裕がないのか。どちらでも構わないふりをして、スマホをソファに伏せました。
しばらくして届いたのは、「次の休み、行ってもいい?」というメッセージでした。「待ってる」と打って、すぐに送りました。その下に続けたい言葉はいくつかあったのに、どれも打たないまま画面を閉じました。
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結び目を拾い上げた彼女




























