
「資料に書いてないことは、断れました」退職後に届いた後輩のメッセージに、私が返した「それでいいんだよ」
コラム
後輩の「これだけ、ですか?」に、理由は話しませんでした。退職の面談で部長の前に置いた紙には、どこにも記録されてこなかった作業が並んでいます。
プリンターから出てきた紙を、裏返してもう1度確かめました。やはり、印刷されたのは1枚だけです。後輩に渡す引き継ぎ資料を、私は最初からこの厚さにすると決めていました。
1枚に収めると決めた理由
受注の入力、請求書の発行、電話の取り次ぎ、備品の発注。この席の仕事として決められているのは、本当はそれだけです。
課長の会議資料は、「今回だけ頼むよ」と言われたのが始まりでした。休みの日の在庫確認も、辞めた人の穴を埋めているうちに、いつの間にか私の予定になっていたもの。休みの日に鍵を開けて、誰もいない倉庫で段ボールの数を表に写していく作業です。どちらも、正式な担当業務として記録されたことはありません。
入って半年の後輩が、これを全部引き受けてしまう姿が浮かびました。頼まれたら断らない子だということは、隣の席で見てきてよく知っています。
理由を言わずに叩いた紙
資料を渡すと、後輩は紙を持ったまま、しばらく目を落としていました。
「これだけ、ですか?」
顔を上げた後輩の前で、私はペンの先で資料の上をトンと叩きました。
「書いてあることが、この席の仕事だよ」
本当は理由まで話すつもりでした。けれど話せば、あの子は自分からやると言い出す気がして、黙って机の片付けに戻りました。
次のページへ
最終日、部長の前に置いたもう1枚





























