「今日は豪華だけど、俺の飯だけ手抜きだろ」同期の前で笑った俺に、妻が返した「何時に帰ってくる?」

コラム

妻の問いにスマホの予定表を開いても、答えはどこにもありませんでした。駅からの帰り道、俺は平日の皿を1つずつ思い出していきます。

キッチンから聞こえる油のはじける音を背に、同期とソファで缶ビールを開けていました。職場の人間を家に呼ぶのは、結婚して初めてのことです。何気ない軽口が、そのまま自分に返ってくるとは考えていませんでした。

同期に褒められた大皿

「店のみたいだな」と同期に言われ、うれしいより先に照れくさくなりました。家の中を職場の人に見せること自体、慣れていなかったのです。

「今日は豪華だけど、俺の飯だけ手抜きだろ」

笑いを取るつもりで大皿を指さすと、同期は笑い、キッチンの妻も笑っていました。平日の俺の夕飯は、ラップのかかった1枚の皿。煮物か焼き魚を温めて、1人で食べる。平日の夜に、揚げ物が出てきた記憶はありません。今日は久しぶりの唐揚げだったのです。だから冗談の半分は、本音でもありました。

予定表に載っていなかった答え

妻が火を止め、エプロンで手をふきながらこちらへ来ました。

「じゃあ、明日から揚げたてで出そうか。何時に帰ってくる?」

責める口調ではなく、本当に答えを待っている顔でした。スマホを取り出して予定表を開いても、並んでいるのは打ち合わせばかりで、帰る時間はどこにもありません。「今から帰る」と送るのは、いつも会社の出口を出てから。妻がそれをどんな状況で受け取っているのか、気にしたこともありませんでした。

「いや、それは、日によるっていうか」

同期が吹き出しました。

「お前、いつもフロアの電気消す係じゃん」

頭をかいて、唐揚げを1つ口に放り込みました。揚げたてのはずなのに、味がよく分かりませんでした。

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