
「先に言ってたら、今ごろ隣にいたの私だったかもね」と笑う友人→彼の返事は「知ってたよ」だけだった
コラム
帰り道にどれだけ聞いても、彼は「ごめん。それ以上は、俺からは話せない」と言うだけでした。3年もの間、隣にいた彼が何を守っているのか、私には分かりませんでした。
右隣の席の友人は、空になったグラスの氷を揺らしながら、私の顔ばかり見ていました。
大学の仲良しグループで囲んだテーブル
大学時代に同じグループだった5人で集まるのは、半年ぶりでした。彼と付き合い始めたのは4年生の春で、もうすぐ3年目になります。隣に座る彼は、いつものように私の苦手な玉ねぎを自分の皿へ移していました。
友人はこの日、ハイボールをすでに4杯飲んでいました。学生の頃から、私にだけ少し棘のある冗談を言う人です。「その服、誰に見せるために選んだの?」と笑われたこともありました。それでも同じグループだからと、深く考えずにやり過ごしてきました。
「ねえ、もう時効だから言っちゃうね」
友人は頬杖をついたまま、笑ってこちらへ身を乗り出しました。
「知ってたよ」とだけ言った彼
「彼のこと、私も好きだった」
テーブルの笑い声が途切れます。友人はさらに続けました。
「先に言ってたら、今ごろ隣にいたの私だったかもね」
男友達が「おいおい、飲みすぎだって」と割って入っても、友人はこちらを見たまま笑っています。グラスの縁を指でなぞりながら何と返そうか考えていると、隣から彼の声がしました。
「知ってたよ」
笑いも否定もない、短い返事。友人は笑ったままグラスをテーブルに戻し、「なーんだ、つまんないの」と言いました。彼は平然とメニューを開いて店員さんを呼び、「すみません、レモンサワーひとつ」と頼んでいます。私がいつも2杯目に選ぶものでした。
知っていたなら、いつから。どうして一度も話してくれなかったのか。運ばれてきたグラスに、手を伸ばす気にはなれませんでした。
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帰り道に聞けたこと、聞けなかったこと





























