
酔った友人の「時効だから言っちゃうね」→否定も笑いもせず「知ってたよ」と返した俺が、彼女に黙っていたこと
コラム
酔った友人の言葉を、否定も笑いもせずに受け流した俺。その理由を帰り道の彼女に話せなかったのは、大学時代に交わしたある約束があったからでした。
開いたメニューの文字は、ひとつも頭に入ってきませんでした。
学祭の後片付けの日に聞いた言葉
彼女の友人から気持ちを打ち明けられたのは、大学2年の学祭の後片付けの日です。人の減った教室で、段ボールを畳んでいたときでした。
「ごめん、好きな人がいる」
そう返すと、友人は少し黙ってから「このこと、誰にも言わないで」と言いました。俺はうなずき、好きな人が誰なのかは最後まで口にしませんでした。
その頃にはもう、彼女のことが気になっていたからです。1年の合宿で、帰りのバスに乗り遅れかけた俺の荷物を、先に網棚へ上げておいてくれた人でした。
付き合い始めてからも、友人が彼女にだけ棘のある冗談を言うのには気づいていました。そのたびに彼女の隣へ座るようにしてきたものの、理由は話せないままでした。
「知ってたよ」としか言えなかった理由
半年ぶりに5人で集まった店で、友人はハイボールを何杯も空けていました。
「ねえ、もう時効だから言っちゃうね」
嫌な予感のとおり、友人は彼女に向けてあの話を始めます。
「彼のこと、私も好きだった」
「先に言ってたら、今ごろ隣にいたの私だったかもね」
実際には、友人は先に言っていました。そして俺は、そのとき断っています。けれど皆の前でそれを話せば、約束を破ったうえに、酔った席で友人に恥をかかせることになります。かといって黙って笑えば、彼女の前であの言い方を認めることになります。
男友達が止めに入る声を聞きながら、俺は口を開きました。
「知ってたよ」
友人にだけ伝わればいいと思って、それだけを返しました。友人がグラスをテーブルに戻し、「なーんだ、つまんないの」と言ったのを見て、意味は届いたのだと分かりました。
そのまま店員さんを呼び、「すみません、レモンサワーひとつ」と頼みました。彼女がいつも2杯目に選ぶものです。けれど運ばれてきたグラスに、彼女は最後まで手を伸ばしませんでした。
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守ってきた約束と、帰り道の彼女





























