
「ごめん。ちゃんと話したい」彼女から初めて届いた一言に、俺は電話口で「送ってくれて、ありがとう」
コラム
入力欄に打ち込んだ「ごめん」を、送らずに後ろから消しました。付き合って3年、喧嘩のあとにこの一言を先に送るのは、いつも俺の方でした。けれどその日だけは、画面を伏せ、買い物袋の横に置いたままにしました。
材料を前に打ち返した、短い言い合い
その日は、彼女が仕事帰りに俺の部屋へ来る約束。スーパーで鍋の材料をそろえて帰ったところで、彼女からメッセージが届きました。
疲れたから今日は行けないかも、という彼女に、材料はもう買ってあると返すと、やりとりは一気に尖っていきました。
「疲れてるって言ってるじゃん」
「前も同じ理由でなしになったよね」
「じゃあもういいよ」
疲れている相手に、前のことまで持ち出したのは俺です。ただ、直前で予定を消されて、袋いっぱいの材料を前に黙っていられなかったのも本当でした。
俺が送り続けてきた「ごめん」の意味
喧嘩のたびに先に送ってきた「ごめん」は、自分だけが悪いと認める言葉ではありませんでした。まだ話したい、という合図のつもりでした。
学生の頃、喧嘩のあとにお互い連絡しないまま、それきりになった恋がありました。どちらかが最初に扉を開けないと、関係はそのまま終わってしまう。だから彼女と付き合ってからは、どんな言い合いのあとも、半日以内には必ず送ってきました。
ただ、3年続けるうちに、別の考えも溜まっていきました。もし俺が送らなかったら、この人は追いかけてきてくれるのだろうか。
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