
「お前、ちっちゃいな」名前より先に、私は「お前」と呼ばれていた。上京した日に父から届いた長文
コラム
鍵の話か、無駄遣いの話か。叱られると身構えて開いた父の長文に、小言は一行もありませんでした。書かれていたのは、私が生まれた日に父が最初にかけた一言です。
父の「お前」のあとには、いつも小言が続いた
物心ついたころから、父は私を「お前」と呼びます。名前で呼ばれた記憶は、ほとんどありません。
「お前にはまだ早い」「お前は考えが甘い」。中学に上がるころには、父の「お前」のあとに決まって小言が続くようになっていました。
東京の会社に就職が決まってからは、「お前一人で本当にやっていけるのか」が口癖に。心配されているというより、最初からできないと決めつけられている気がしていました。
やめてと送った私に、父の返事は「お前はお前だろ」
引っ越しの前日、荷造りの手を止めて反論すると、父は新聞をたたんで言いました。
「お前は何も分かってない」
何年もためてきたものが、その「お前」であふれ出しました。そのまま自分の部屋に戻り、父にメッセージを送ります。
「その『お前』って言うの、やめてよ」
すぐに既読が付き、返ってきたのは短い一行でした。
「お前はお前だろ」
「そういうところが嫌なの」
それきり、父とは口をきいていません。「荷物、それで全部か」と声をかけられても、返事をせずにガムテープを貼り続けました。翌日、駅まで見送りに来たのは母だけです。
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長文に書かれていたのは、私が生まれた日のこと





























