
「お前、ちっちゃいな」名前より先に、私は「お前」と呼ばれていた。上京した日に父から届いた長文
コラム
長文に書かれていたのは、私が生まれた日のこと
通知に出ていたのは、父の名前と「お前へ」という書き出しだけでした。
また説教が始まる。鍵はちゃんと掛けろ、無駄遣いはするな。言い返す文面まで頭の中で用意してから、ようやくチャットを開きます。
「お前へ」
「お前が生まれた日のことを覚えている」
続いていたのは、産院の廊下を何度も往復したこと、名前は母と何日も話し合って決めたこと。そして、こんな一行でした。
「初めて抱いたとき、最初に出た言葉は『お前、ちっちゃいな』だった」
名前より先に、私は「お前」と呼ばれていたのです。すぐ上に残る「お前はお前だろ」の一行が、送られてきた日とは違って見えました。小言はどこにもなく、最後は「困ったら連絡しろ」だけ。用意していた言い返しは使わないまま、最初から読み直しました。
そして...
何度か打ち直しても、書き出しだけは変えませんでした。
「お父さんへ。全部読んだ。困ったら、ちゃんと連絡する」
すぐに既読が付き、「おう」とだけ返ってきます。
チャットには、父の「お前へ」と私の「お父さんへ」が並んでいます。口下手な父があの長文をどんな思いで打ったのか、まだ聞けていません。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)






























