
「来月も同じ週末に帰ってくるね」と言った私→母の一言で喧嘩別れ、駅で見かけた背中に顔をそむけた
コラム
スーツケースの車輪が、実家から駅へ続く坂道でずっと音を立てていました。いつもなら母が車で送ってくれる道を、1人で歩いて下りるのは初めてでした。家を出る前に言われた言葉を、坂の途中で何度も思い返していました。
友人の誘いを断ってまで
父が単身赴任になってから、毎月実家に帰るのが習慣になっていました。片道3時間かけての帰省です。1人で暮らす母が気がかりで、それが当たり前になっていたのです。
今回の帰省中にも、大学時代の友人から電話がありました。来月、みんなで旅行に行かないかという誘いです。
「ごめん、その週末は実家に帰るんだ」
電話を切ったあと、スマホを布団の上に放りました。行きたかった気持ちは、もちろんあります。それでも母が待っているのだから仕方ない。そう自分に言い聞かせて、荷造りを続けました。
最後の食卓で
帰り支度を終えて、最後に2人で食卓についた時です。
「来月も同じ週末に帰ってくるね」
母は箸を置いて、少し間を空けました。
「毎月じゃなくていいよ」
「なんで?お母さん1人だと大変でしょ」
「大変じゃないから言ってるの」
ぶっきらぼうな返事に、麦茶のグラスを持つ手に力が入ります。旅行を断ってまで帰ってきているのに。その思いが口から出る直前で、別の言葉に変わりました。
「せっかく帰ってきてるのに、その言い方はないんじゃない?」
母はこちらを見ないまま、短く言いました。
「もう帰ってこなくていい」
「分かった。もう帰らない」
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売店の前の背中





























