
「私のほうが先に結婚する」と言っていた同期→私の結婚式に来なかった理由を、今も聞けずにいます
コラム
式の当日、控室で受け取ったのは短いメッセージでした。週明けにはデスクに紙袋が置かれていたものの、同期は欠席の理由を口にしないまま、画面に向き直ってしまいました。
披露宴の会場で、同期のテーブルに1つだけ空いた席がありました。白い名札に書かれていたのは、入社以来となりの席で働いてきた彼女の名前です。乾杯のグラスが配られても、その席のナプキンだけは折られたままでした。
同期の口ぐせ
彼女とは同じ年に入社し、同じ部署に配属されました。仕事の相談も愚痴も言い合える相手でしたが、1つ口ぐせがありました。
最初に聞いたのは、先輩が結婚報告をした日です。社員食堂でトレーを置くなり、同期はこう言いました。
「私のほうが先に結婚する」
視線は、まっすぐこちらに向いていました。自分に向けた言葉だと分かり、笑って「うん、応援してる」とだけ返しました。
それからも、同期で集まるたびに彼女は同じ言葉を口にしました。評価面談の結果を聞かれることもあります。比べられている気がしても、競うつもりはなかったので、聞かれたことに答えるだけにしていました。
先に伝えたかった報告
私が付き合って3年の彼からプロポーズされたのは、その1年ほど後のことです。
社内に報告する前に、彼女にだけは自分の口で伝えたいと思いました。あの口ぐせを知っているぶん、人づてに耳に入るのは避けたかったのです。
休憩室で紙コップのコーヒーを手にしていた彼女に、声をかけました。
「実はね、結婚することになったの」
彼女は紙コップを両手で持ち直し、少し間を置いて答えました。
「そっか、おめでとう」
足早に席へ戻っていく背中。伝え方は間違っていなかったかと、しばらく休憩室から動かずに考えていました。
数週間後に届いた返信はがきには、出席に丸。「楽しみにしてます」と添えられた文字を見て、ようやくほっとできたのです。
次のページへ
当日に届いたメッセージ




























