「お前」呼びは愛情だと言う彼→同じ言葉を返した私に届いた「ごめん。もう使わない」

コラム

彼の言い分をそのまま返したメッセージには、すぐに既読がつきました。それきり動かない画面を置いてお風呂に入り、戻ってきた私が目にしたのは、たった1通の返信でした。

スマホの通知に、彼からのメッセージが浮かびました。「お前、今週どこ行きたい?」。付き合い始めた頃は名前で呼ばれていたのに、いつの間にか届く文面のほとんどが「お前」から始まるようになっていました。そのメッセージだけは、いつものように流す気になれませんでした。

愛情だと言われた呼び方

付き合って4か月になる彼は、口数が少なく、メッセージも短い人です。「お前が決めていいよ」「お前もう寝た?」。1つ1つは何気ない文面でも、読むたびに、自分が少しずつ雑に扱われていくような気がしていました。

言い方を何度か変えてから、送信を押しました。

「ねえ、お前って呼ばれるの、ちょっと苦手かも」

既読はすぐにつきました。けれど返信が届いたのは、洗濯物を半分ほど畳み終えた頃です。

「え、そう?」

「お前って呼ぶのは愛情」

「ほかのやつには言わないし」

特別扱いのつもりなのは、文面から読み取れました。それでも愛情だと言われると、私の「苦手」がわがままのように思えてきます。「そっか」とだけ返して、畳みかけのタオルを膝に置きました。

名前の代わりに選んだ呼び方

言い返す代わりに、試してみたいことがありました。名前ではない呼び方で呼ばれたら、彼はどう感じるのだろう。

次のメッセージから、彼を「あなた」と呼ぶことにしました。

「あなたは何時に着きそう?」

「あなたが食べたいものでいいよ」

1通目に届いたのは「あなたって笑」。それには触れず、「あなた」を使い続けました。スマホの予測変換でも、いつしか彼の名前より先に「あなた」が出てくるようになっていきます。

数日たつと、彼の返信から「お前」が減っていきました。代わりに増えたのは、主語のない短い文です。「何時?」「了解」。怒っているのか、戸惑っているのか。画面の文面だけでは、どちらとも読み取れないままでした。

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