
彼女を「お前」と呼んでいた俺→ある日からメッセージが「あなた」で始まるように。1週間後に届いたメッセージとは?
コラム
彼女から届いた返信には、俺の言い分がそのまま返ってきました。読み終えたとき、頭に浮かんだのは、子どもの頃から見てきた実家の食卓でした。
吊り革につかまりながら、片手で彼女へのメッセージを打っていました。書き出しは、いつものように「お前」です。付き合って4か月、その呼び方が彼女にどう届いていたのか、俺は考えたこともありませんでした。
父の口癖だった呼び方
俺の父は、母のことを「お前」としか呼ばない人でした。「お前、お茶」「お前も座れよ」。ぶっきらぼうな言い方なのに母は笑って返していて、子どもの頃の俺には、それが夫婦の仲のよさに見えていました。
付き合い始めの頃は、彼女を名前で呼んでいました。ただ、打つたびに妙に照れくさくて、気づけば実家で聞き慣れた「お前」に頼るようになっていたのです。
だから、お前と呼ばれるのが苦手だと彼女から届いたとき、すぐには意味が飲み込めませんでした。しばらく考えて、「お前って呼ぶのは愛情」「ほかのやつには言わないし」と送りました。
ほかの人には使わない、特別な呼び方のつもりでした。「そっか」と返ってきて、分かってもらえたのだと思い込んでいました。
届き始めた「あなた」
その次のメッセージから、彼女の文面が変わりました。何時に着くのかを聞くメッセージが、「あなた」から始まっていたのです。
1通目には「あなたって笑」と返しました。けれど彼女はそれに触れず、「あなた」を使い続けました。名前でもあだ名でもない呼び方は、丁寧なのに、知らない人から話しかけられているようで落ち着きません。
気づけば俺のほうが「お前」と打ちにくくなって、主語を抜いた「何時?」「了解」ばかり送っていました。1週間ほどたった頃、とうとう、いつまで続けるのかと送りました。
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伏せたスマホと実家の食卓




























