
挨拶の日、「子どもっぽい」と彼女が嫌がった服を頼んだ俺→母に見せたかったもの
コラム
写真と見比べていると思っていた視線
当日、玄関のドアを開けた母は、彼女の服を見て小さく声を上げました。
「あら、黄色」
そのあと俺のほうをちらりと見た母は、あの写真の子だと気づいた顔に見えました。
居間では父が話を回し、母はお茶と羊羹を出したあと、湯のみを両手で包んで座っていました。母の視線が何度も彼女の袖のあたりへ向かうのを、写真と見比べているのだろうと思いながら、父との仕事の話を続けていました。
ふと隣に目をやると、彼女は膝の上で重ねた手の下で、ワンピースの布をつまんでは離していました。母の視線が彼女にどう映っているのか、そこで初めて考えました。
「母さん、この服覚えてるんだよ」と言いかけて、やめました。それを言えば、旅行の写真を母に見せていたことまで、この場で説明することになります。父の話を聞きながら切り出すタイミングを探しているうちに、お茶が冷めていきました。
そして...
帰り際、靴を履く彼女の前に、母が一歩出ました。
「その服、また着てきてね」
さっきより少しだけ大きな声でした。人見知りの母にしては、精一杯の言葉だったはずです。彼女は「はい」と頭を下げましたが、その顔が晴れていたのかどうか、俺には読み取れませんでした。
駅で別れたあと、電車の中で写真フォルダを開きました。屋台の前で笑う彼女と、居間で布をつまんでいた彼女の手が、うまく結びつきません。次に実家へ行く前に、この写真を見せて母のことを話すつもりです。頼む前にそうするべきだったことは、分かっています。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)






























