彼女の手料理を同期の前で下げた俺が、写真フォルダの弁当を見て思い出したこと

コラム

写真フォルダを開くと、会社で見せびらかしてきた弁当が何枚も出てきました。あの食卓で口をついて出た言葉は、誰の真似だったのか。思い当たる人がいました。

皿を洗い終えてソファに座ると、スマホが短く鳴りました。送り主は、さっき玄関で見送ったばかりの同期です。文面を読み終えて、俺はシャワーの音がする浴室のほうへ目を向けました。

同期の前で出た口癖

彼女と暮らし始めて1年。会社の同期を家に呼んだ休日、食卓には肉じゃがと唐揚げ、甘めの卵焼きが並びました。同期がいちばんに手を伸ばしたのは卵焼き。すぐに2切れ目を口に運ぶのを見て、先に口が動いていました。

「こいつ料理下手でさ」

笑いながら「卵焼きもいつも崩れてるし」と付け足すと、同期は「え、普通にうまいけど」と返しました。照れくさくて、俺はもう一度笑ってビールを飲み干すだけ。彼女は「ごめんね、下手で」と口元だけで笑い、台所へ立っていきました。

届いたメッセージ

帰り際、同期が玄関で「あ、充電器忘れた」と言うので、「取ってくる」と返してソファのほうへ向かいました。クッションの下から見つけて玄関へ戻ると、同期は「ごちそうさまでした」と頭を下げて帰っていきました。俺が離れていた間に、2人が何を話したのかは知りませんでした。

皿を洗い終えたあとに届いたメッセージには、こうありました。

「卵焼きの自慢のこと、彼女さんに言っといたから。家でもちゃんと言えよ」

会社では毎日、彼女の弁当を同期に見せていました。卵焼きがうまい、今日のも最高だと、呆れられるほど話していたのは本当です。それを本人に知られたと思うと、どんな顔で話せばいいのか分からなかったのです。

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