彼女の手料理を同期の前で下げた俺が、写真フォルダの弁当を見て思い出したこと

コラム

写真フォルダに並んだ弁当

浴室のドアの前まで行き、ノックしかけては手を下ろし、結局ソファに戻って写真フォルダを開きました。同期に見せてきた弁当の写真が、ずらりと並んでいました。どの弁当にも、端の少し崩れた卵焼きがありました。

なのに、どうして本人の前であんなことを言ったのか。考えているうちに、実家の食卓を思い出しました。客が来るたび、父は「うちのは料理下手で」と笑い、母は黙って笑い返していた光景です。身内を下げるのが礼儀なのだと、いつの間にか思い込んでいたのかもしれません。あのとき母がどんな気持ちで笑っていたのか、考えたこともありませんでした。

浴室のドアが開き、彼女が俺の横を通って寝室へ入っていきました。声をかけるつもりで顔を上げ、結局スマホの画面を消しただけです。

そして...

翌朝、玄関で弁当を受け取ると、彼女が「人前で下手って言われるのは、嫌だった」と言いました。弁当箱を両手で持ったまま、「ごめん。言い方、間違えた」と返すのが精一杯。父の話をしても、言い訳にしかならない気がしたからです。

会社の休憩室でふたを開けると、いちばん目立つ場所に卵焼きが入っていました。いつもなら同期に見せる弁当を写真に撮り、食べ終えてから彼女に送りました。

「今日の卵焼き、うまかった」

既読はつきましたが、その日のうちに返信は届きませんでした。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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