
「髪、伸ばしてほしい」と言ったきり理由を言わない彼→本棚で見つけた付箋だらけの1冊
コラム
彼の仕事の本に紛れていたのは、付箋だらけの1冊でした。余白に残された彼の字が、頭から離れませんでした。
彼の部屋の鏡の前で、首にかかり始めた毛先をつまんでいました。付き合って2年、ずっと短い髪で過ごしてきた私。美容院の予約画面を開くと、ソファにいた彼が顔を上げました。
理由を言わない彼
「そろそろ髪切りに行こうかな」
彼はスマホを置いてこちらを見ました。
「髪、伸ばしてほしい」
髪型について何か言われたのは初めてです。短いほうが似合うと、周りにも言われてきました。
「急にどうしたの?」
「理由は、伸びたら言う」
彼はそれだけ言って、麦茶を取りに立ちました。私は毛先を指に巻きつけたまま、その背中を見ていました。
仕事の本に紛れていた1冊
次の週末、彼がコンビニへ出ている間に、旅行のガイドブックを探しました。建築の専門書や仕事のファイルが並ぶ棚に、明るい色の本が1冊挟まっています。
抜き出すと、ロングヘアのアレンジ本でした。黄色い付箋が何枚も貼られ、余白のあちこちに彼の字で小さな書き込みがあります。
モデルはみんな背中まである長い髪。私の髪を自分好みに変えたいのだろうか。前の恋人がこういう髪だったのかもしれない。
書き込みを読もうと顔を近づけたとき、玄関の鍵が回る音がしました。慌てて本を棚の端に戻しました。
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遠回しにしか聞けなかった


























