
彼女のアルバムを見た日から、俺は椅子の背に毛糸を結んで練習していました
コラム
「理由は、伸びたら言う」と答えた俺の本棚で、あの本が移動していました。彼女に見られたのかもしれません。
椅子の背に結んだ3本の毛糸は、何度編んでも途中で曲がります。ほどいて、また最初から。彼女が帰ったあと、毎晩練習していました。うまく編めるまでは言わないと決めていたのです。
古いアルバムの三つ編み
半年前、彼女の実家でアルバムを見せてもらいました。小学生の彼女は、どの写真でも長い髪をきれいに編んでいました。
「これ、母が毎日編んでくれてたの。自分じゃできなくて、結局切っちゃった」
笑っていた彼女が、その写真だけは長く見つめていました。
帰りにヘアアレンジの本を買いました。俺は人の髪を編んだことがありません。手芸店で買った毛糸を椅子の背に結び、本に付箋を貼って練習を始めました。使い終わると、仕事のファイルの間に隠していました。
言えなかった残りの半分
編み目が少しまっすぐになってきた頃、鏡の前の彼女が言いました。
「そろそろ髪切りに行こうかな」
今切られたら、また振り出しに戻る。思わず口にしていました。
「髪、伸ばしてほしい」
「急にどうしたの?」
本当のことを言いかけてやめました。毛糸では編めても、人の髪で失敗しない自信はありません。彼女のお母さんのようにできなかったら。そんなことを考えてしまったのです。
「理由は、伸びたら言う」
麦茶を取りに立ち、冷蔵庫の中を眺めるふりをしていました。
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棚の端に移っていた本


























