彼女のアルバムを見た日から、俺は椅子の背に毛糸を結んで練習していました

コラム

棚の端に移っていた本

次の週末、買ってきたアイスを並べていると、彼女が言いました。

「短いほうが、楽なんだけどな」

「無理にじゃなくていいよ」

本心でした。嫌がることを押しつけるつもりはありません。ただ、自分でも声が小さくなったのが分かりました。

彼女を駅まで送って戻ると、仕事のファイルの間にあった本が棚の端に移っていました。

見られたのでしょう。余白に書いた字も、きっと。何の本だと思われたのか気になりましたが、確かめるには練習のことまで話さなければなりません。

毛糸の三つ編みさえ、まだまっすぐにできないのです。

そして...

3週間後、美容院帰りの彼女が部屋に寄りました。髪は前とほとんど同じ長さでした。

「あんまり変わってないね」

「うん、今回はね」

それ以上聞かなかったのは、練習のことを話してしまいそうだったからです。

彼女が帰ったあと、また毛糸を編み直しました。3本目を重ねるところで、少し左に曲がってしまいます。

あの本は、棚の端から戻さないことにしました。

(20代男性・設計職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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