友人の部屋を毎回勝手に模様替えしていた私が、あの窓際にこだわった理由

コラム

「家があるんだから場所代かからないじゃん」と言い放ったあの時、本当の理由を話せば済むことは分かっていました。けれど、どうしても素直になれず、別の言葉でごまかしてしまったのです。

スマホで見つけた物件情報を、そのまま友人に転送しました。広さのわりに家賃が安く、駅からも近い。部屋を探していた友人には好条件だと思ったからです。まさかその部屋が、自分にとっても特別な場所になるとは思いもしませんでした。

あの家に似た窓際

父の転勤の影響で、高校を卒業するまでに6回の引っ越しを経験しました。1番心に残っているのは、小学生の頃に4年間暮らした社宅です。

母は月に1度、クラスの友達を家に招くのを許してくれました。何も置いていない窓際にみんなで並んで寝転び、天井を見上げながら笑い合った思い出。最後の集まりで「来月もここで遊ぼうね」と約束したものの、その月のうちに急な引っ越しが決まってしまったのです。

友人の部屋を初めて訪れた日、窓際に座ってふと見上げると、大きな窓の位置も低めの天井も、あの懐かしい社宅にそっくりでした。ただ、その窓際にはローテーブルとクッションが置かれていました。

ケチだと思われるほうがまし

それからの集まりでは、私はいつも早めに押しかけるようになりました。テーブルやクッションを端へ寄せ、何もない窓際に寝転ぶと、まるで幼い頃のあの部屋に戻ったような心地がしたのです。「それ、勝手に動かさないでよ」と注意されても、「こっちのほうが絶対に過ごしやすいって」と受け流すばかり。家具を元に戻す友人の苦労など、頭から抜け落ちていました。

日程も場所も、グループチャットで私が真っ先に決めていました。月に1度、あの部屋に集まれることがただ嬉しかったのです。

「毎回うちだと、ちょっと大変なんだよね」と切り出された時、本当の理由を明かすべきだと分かっていました。けれど、友人の部屋に子供時代の思い出を重ね合わせているなんて知られたら、不気味に思われるのではないかと怖くなったのです。

「家があるんだから場所代かからないじゃん」

口から出たのは、そんな身も蓋もない一言でした。わざと笑ってごまかしたのは、都合の良いケチだと思われたほうが、まだマシだと思えたからです。

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