
「私がどこか行けば、丸く収まるのかな」笑ってそう言った彼女より先に、俺が部長に異動を願い出た理由
コラム
本人には俺から話します。部長にそう言っておきながら、辞令が出るまで彼女には黙っていました。先に決めてしまいたかった理由は、彼女が笑いながら口にした一言にあります。
部長の席に向かうと、書類をめくっていた手が止まりました。まだ半分も人が来ていないフロアで、俺は異動の希望を伝えました。チームの誰かが出社してくる前に、済ませておきたかったのです。「本当にいいのか」と聞かれ、うなずきました。
噂が広まった日、会議室で言われたこと
彼女とは同じ販促チームで、付き合って1年になります。主任の俺は、彼女の企画書に最初に目を通す立場でした。
休日のスーパーで、かごを持っていたところを後輩に「あ、お疲れさまです」と声をかけられた翌日。話はもうチーム中に広まっていて、その日のうちに部長から会議室に呼ばれました。
「評価する側とされる側がそういう関係っていうのは、どうしてもな。どっちかに動いてもらうことになる」
部長の言うことはもっともでした。
「本人には俺から話します」
そう答えて会議室を出たものの、どう切り出すかは、席に戻っても決まりませんでした。
書き直しを見てきたから、止めたかった
その帰りに彼女の部屋へ寄ると、麦茶を注ぎながら彼女が言いました。
「企画が通ったのも、そういうことかって言われちゃった」
その企画書が20回近く書き直されたことを、俺は知っています。赤を入れて返すたびに、次の日には新しい版が机に置かれていました。テーブルの木目を見ながら返す言葉を探していると、彼女が笑いながら付け足しました。
「私がどこか行けば、丸く収まるのかな」
「そんなこと、しなくていいよ」
麦茶を一気に飲んで、その話を終わらせました。彼女なら、本当に自分から手を挙げる。企画を誰かに渡し、そういうことだったと言われたまま別の課へ移るのだろうと思いました。それだけは止めたかったのです。
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非常階段で、説明を短くした理由


























