
チラシの裏で何度も書き直した、娘への3行。「とうさんがうった」と返した父の本当の気持ち
コラム
娘に送った3行の絵文字には、1つずつ意味を込めていました。けれど、娘の質問に返せたのは、絵文字のない短い一言だけでした。
娘に初めてメッセージを送った夜、台所のテーブルには、裏に鉛筆で下書きしたチラシが3枚重なっていました。消しゴムで何度もこすった部分は、紙が薄くなっています。それでもまだ、送信を押す決心はつきませんでした。
短い言葉が冷たく読まれる気がして
長年使ってきた折りたたみの携帯電話が、もうすぐ使えなくなると聞いたのがきっかけでした。店で機種を変え、文字の打ち方を一通り教わり、名前は自分で「とうさん」と入れました。
妻は娘と、毎日のようにメッセージを送り合っています。妻に見せてもらった画面では、どの文の後ろにも絵文字が付いていました。
俺の言葉は昔から短い。電話でも「おう」と「じゃあな」くらいしか言えず、娘には「お父さん、なんか怒ってる?」と何度も聞かれてきました。言葉だけで送れば、もっと冷たく読まれるだろう。だから、どの行にも絵文字を付けると決めていました。
人さし指1本で打った、3行と8つの絵文字
その夜、妻が先に寝室へ行ってから、人さし指1本で打ち始めました。打つのは「元気か」「とうさんもスマホにしました」「こんど、かえる日おしえて」の3行です。漢字に変わってくれたのは「元気」と「日」くらいで、あとは変換の出し方が分からずひらがなのまま。「スマホにしました」と丁寧語になったのは、手紙の書き出しのような気がしたからです。
絵文字は1行ずつ選びました。「元気か」の後ろには太陽と力こぶ。2行目には目玉と、祝いの星と、大笑いしているつもりの黄色い顔。
3行目には実家のドアと、帰ってきたら握ってやるつもりのおにぎりと、頼むという気持ちで両手を合わせた絵を付けました。
妻に見せずに送ったのは、自分で打ったものを届けたかったからです。送信を押したとき、湯のみのお茶はすっかり冷めていました。
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打っては消した、長い説明


























