
チラシの裏で何度も書き直した、娘への3行。「とうさんがうった」と返した父の本当の気持ち
コラム
打っては消した、長い説明
しばらくして、娘から返事が届きました。
「これ、お母さんが打ったの?」
すぐに長い文を打ち始めました。店で教わったこと、チラシで練習したこと、どの絵文字にどんなつもりを込めたか。けれど読み返すと、手柄を並べているようにしか見えません。少しずつ消していくほうが、打つより早く終わりました。
結局送ったのは、これだけです。
「とうさんがうった」
絵文字は付けませんでした。付ければ、また冗談に見える気がしたからです。少しして、娘から返事がありました。
「そうなんだ。帰る日決まったら連絡するね」
俺はおにぎりの絵を付けかけてやめ、「まってる」とだけ送りました。
そして...
数日後、娘から新しいメッセージが届きました。
「来月の連休に帰るね」
妻に画面を見せると、妻は俺の最初の3行までさかのぼり、黄色い顔を指さしました。大笑いではなく、泣き笑いの顔だそうです。娘には、俺が泣きながら打ったように見えたかもしれません。チラシ3枚分の苦労を思えば、あながち間違いでもない気がしました。
カレンダーの連休の欄に、下書きに使った鉛筆で丸を付けました。おにぎりの具は、妻に聞いて娘の好きな鮭に決めています。あの絵の意味だけは、連休に皿にのせて伝えるつもりです。
(60代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)



























