
半休を取ったことも電池切れのわけも言えず家を出た俺→引き返すと、紙袋は玄関の真ん中に置かれていた
コラム
妹の頼みを盾にして、俺は彼女の問いから目をそらしました。半休を取ったことも、電池が切れた理由も、話せないことではなかったのに。
改札を抜けたところで、手が軽いことに気づきました。妹に渡すはずの紙袋を、玄関に置いたまま出てきていたのです。彼女の問いに答えられないでいた数分の間に、俺は自分の用事まで落としていました。
妹からの電話
6つ下の妹が電話の向こうで最初に言ったのは「辞めてきた」でした。寮のある職場に入って半年、荷物のほとんどを置いたまま、財布とスマホだけで出てきたと言います。
会議室の窓のほうを向いて、声を落としました。泣いてはいませんでした。それでも、妹が今いる駅の名前を聞いたとき、そこまで動けるのは俺しかいないと分かりました。
残りの時間を半休にして、妹のいる駅へ向かいました。彼女に知らせようと打ちかけた文は、送らずに消しました。会社の帰りだと言えば済むと思ったのです。
妹は寮のサンダルのまま、ホームのベンチに座っていました。
23センチのスニーカー
妹の友人が近くに住んでいて、しばらく泊めてくれることになりました。友人の部屋まで歩く途中、妹が言いました。
「お兄ちゃん、親にも彼女さんにも言わないで。自分でちゃんと言うから」
「わかった」
2社目を半年で辞めたことを親にどう伝えるか、妹はまだ決めていませんでした。
妹を送り届けてから、駅ビルの靴屋に戻りました。仕事で履いていたサンダルしか持っていなかったので、しばらく友人の家で過ごせるように靴を買うことにしました。妹に聞いたサイズは23で、彼女の足より2センチ小さい数字です。
送り届けたあとも電話で今後の話をしているうちに、スマホは通話と地図で電池を使い切っていました。最終の電車で帰り、部屋に着いたときには日付が変わっていました。
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