
毎回友人の皿に手を伸ばしていた私。差し出された一口を、どうしても受け取れなかった理由
コラム
皿の縁にのせられたひと切れ
あの日、ナポリタンの皿の端に置かれたハンバーグは、実家の食卓の光景と重なりました。あらかじめ与えられたものだけを、行儀よく食べるだけの場所です。
「はい、今日の一口。ここから先は私の分ね」
友人の声は落ち着いていました。それなのに、また「お客さん」の側に戻された気がしたのです。
「それじゃ意味ないんだよ」
戻したひと切れを見つめているうちに、ようやく思い出しました。あの子はいつも、奪うだけでなく、先に自分のおかずを分けてくれていたのだということを。私が形だけ真似していたのは、勝手に奪う行為と言い訳の言葉だけだったのです。
使いかけのスプーンやフォークで、断りもなく人の皿に手を伸ばす。それを毎回されていた友人がどんな気持ちで座っていたのか、考えたこともありませんでした。
そして...
それから2回、友人と食事をしました。フォークは自分の皿から動かさず、ナポリタンも最後まで食べています。
あの日の理由は、まだ友人に話せていません。話したところで、これまでの失礼が消えるわけではないからです。
次の食事の席で、運ばれてきたナポリタンの皿を少しだけ友人のほうへ寄せました。
「これ、一口食べる?」
返事を待つあいだ、自分のフォークは皿の端に置いたままにしていました。
(20代女性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)


























