
店内で泣き続けた娘が、知らない女性のうさぎを「ぴょんちゃん」と呼んだ理由
コラム
窓の外に向けた顔
「ぴょんちゃん」
娘の声を聞いて、私は窓の外へ顔を向けました。玄関で手を振っていた母と、その足元のうさぎ。娘は寂しくて泣いていたのに、帰りを急がせたのは私でした。しばらく娘のほうを見られずにいました。
向かいの席の年配の女性が「かわいいうさぎさんね」と目を細めると、娘は得意げにうさぎを掲げました。近くの席から笑い声がこぼれ、店の中の空気が一気にやわらいでいきました。
気づくと、男性が伝票を持って立ち上がっていました。こちらを見ないまま会計を済ませ、足早に店を出ていきました。
ドアが閉まってから、ようやく女性のほうへ向き直りました。
「本当に、ありがとうございました」
名前のわけも話そうとしましたが、うまく言えそうになく、お礼だけで終わってしまいました。
そして...
先に席を立つ女性にうさぎを返そうとすると、「よかったら、その子もらってください」と言われました。何度も頭を下げる私の隣で、娘はうさぎの手を持って振っていました。
家に着いてから、母にビデオ通話でレストランでの話をしました。娘がマスコットを画面に近づけて「ぴょんちゃん、ふたりになった」と言うと、母は小屋のうさぎを抱き上げて映してくれました。「次は、ふたりそろって連れておいで」
あの店で、私は頭を下げるばかりでした。舌打ちに言い返してくれたのは、隣の席の女性と、小さなうさぎだったのだと思います。名前のわけを伝えられなかったことだけが、今も少し心残りです。
(30代女性・パート)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)




























