「彼女の手料理なんて食べたことないです」と言った彼。職場で同僚が開けた弁当箱は、私が詰めたものでした

カップル

同僚にふたを開けられた彼の弁当箱は、私の机の上のものとまったく同じ中身。それでも彼は「冷凍を詰めただけです」と言い切り、すぐにふたを戻しました。

窓を打つ雨のせいか、自分の席でお弁当を広げる人がいつもより多い休憩時間。2つ隣の席で、彼が弁当袋を持って立ち上がりかけたところに、先輩が椅子を引いてきました。職場では付き合っていることを話していない私たちにとって、少し落ち着かない並びでした。

先輩の質問に、彼が笑って答えた言葉

彼と付き合って1年半、一緒に暮らし始めてからは、2人分のお弁当を私が作っていました。帰宅後におかずを仕込み、出かける前に同じ中身を2つの箱に詰めるのが日課。休憩時間になると、彼はいつもその包みを持って外へ出ていきました。

この日は、先輩が彼の机にお茶を置き、何気ない調子で聞きました。

「彼女に弁当作ってもらったりしないの?」

彼は弁当袋の結び目をほどきながら、笑って首を振りました。

「彼女の手料理なんて食べたことないです」

笑って言い切る彼の横顔を、私は見られませんでした。「なんて」という言い方だけが耳に残ります。早起きして卵を焼いている手元を、軽く払いのけられたような気がしたのです。

開けられた弁当箱と、私が閉じたふた

「じゃあこれ何?」

先輩が、彼の手元の弁当箱のふたを持ち上げました。中には、私が詰めた卵焼きと唐揚げ、ほうれん草のおひたし。

「え、めっちゃちゃんとしてるじゃん」

「冷凍を詰めただけです」

彼はそう言って、すぐにふたを戻しました。

私の机の上には、まったく同じ中身のお弁当が開いたまま。急いでふたを閉め、パソコンの画面に目を移しました。読んでもいないメールを、上から順にクリックしていくだけです。

唐揚げは前日のうちに下味をつけ、卵焼きは焦げないよう何度も巻き直したもの。冷凍食品は1つも入っていませんでした。内緒にするためなら、「たまにね」とでも濁せたはず。わざわざ私の手間をなかったことにする必要が、どこにあったのでしょう。

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